ダイエットを始めると、真っ先に「油は控えたほうがいい」という考えが浮かぶかもしれません。しかし、油(脂質)は私たちの体にとって欠かせない栄養素であり、ただ減らすだけでは逆効果になることもあります。
体に良い油を上手に取ることで、ダイエットの効率を上げ、健康面でもさまざまなメリットが期待できます。本記事では、ダイエット中に取り入れたい良質な油の種類と、日々の食事での賢い活用法をご紹介します。
ダイエットにおける「油=悪」は間違い
油(脂質)は、タンパク質や糖質と並ぶ三大栄養素のひとつで、効率的にエネルギーを生み出すための主要なエネルギー源です。また、細胞膜やホルモン、脳の組織を構成する成分になったり、皮下脂肪として臓器を保護したりと、体内で多くの重要な役割を果たします。
ダイエット中には悪者扱いされがちな「油」ですが、脂質を極端に減らしすぎると、摂取エネルギーが不足する恐れがあります。摂取エネルギー不足の状態が続くと、体が省エネモードになり、かえって脂肪を体にため込みやすくなる可能性も……。さらに、脂質不足は、便秘や疲労、肌トラブル、さらには脳の働きの低下といった体調不良を招く恐れもあります。
たしかに、脂質を過剰に摂取すると、肥満や生活習慣病のリスクが高まります。しかし、これは油に限った話ではありません。タンパク質や糖質も、過剰に摂取すると余ったエネルギーが体内に蓄積されてしまいます。「油だから太る」は誤解なのです。
ですから、極端に油だけを避けるのは合理的ではありません。大事なのは、どういった油をどう摂取するか。以下、こうした点について具体的にご紹介します。
ダイエット中におすすめの油とその効果
ダイエット中は、摂取する油の種類を意識することが大切です。健康的な油を取り入れることで、体のエネルギー代謝が高まり、脂肪燃焼がスムーズになる効果が期待できます。ここでは、ダイエット中におすすめの油を3つご紹介します。
ダイエットに良い「MCTオイル」の効果と使い方
MCTオイルは、ココナッツやパームの種子などヤシ科の植物に含まれるMCT(中鎖脂肪酸)を主成分とする油です。色は無色透明に近く、味や香りもほとんどなく、サラッとしている製品が多いです。
MCTは普通の油よりもエネルギーとしてすばやく消費されるため、体脂肪がたまりにくいとされています。また、MCTには食欲を抑制する効果があるとされ、ダイエット中の食事管理に役立ちます。
コーヒーや豆乳にティースプーン1杯分を加えたり、サラダに少量かけて使うのがおすすめです。一方、揚げ油、炒め油に使用すると、煙が出たり泡立ちが起こるので、基本的にはNGです。
美容と健康に役立つ「オリーブオイル」のメリット
オリーブオイルは、オリーブの実を搾って作られる植物油。原料のオリーブの種類や産地、製法などにより、色や香りはさまざま。淡い黄色から濃い金色、緑色のものもあります。
地中海式ダイエットでも使用される健康的な油で、オレイン酸が豊富に含まれているのが特徴です。オレイン酸は血中コレステロール値を改善し、心臓病のリスクを減らす働きがあります。また、抗酸化作用を持つビタミンEが含まれているため、美容にも効果的です。
オレイン酸が豊富なエクストラバージンオリーブオイルがおすすめ。紫外線による酸化を防ぐために、光を通さない容器(黒い瓶など)に入ったものを選びましょう。ドレッシングとしてサラダにかけたり、加熱せずにそのまま摂取することで効果が最大限に発揮されます。
体の内側から健康に! 「亜麻仁油」の特徴と活用法
亜麻仁油は、亜麻の種子を圧搾して作られる油です。ろ過して精製している製品と、搾油しただけの未精製の製品とがあり、未生成の亜麻仁油は栄養も豊富ですが、独特の香りや風味が強くなります。
オメガ3脂肪酸を多く含むのが特徴で、体内の炎症を抑える働きのほか、脂肪代謝の促進、血糖値上昇の抑制、血流改善、筋肉の合成促進、免疫力向上といった効果が期待できます。オメガ3は体内で合成できない必須脂肪酸で、特にダイエット中の栄養補給に最適です。
熱に弱いため、飲み物に入れたり、サラダやヨーグルト、納豆などに直接かけて摂取するのが理想的です。開栓後2週間ほどで酸化し始めるので、保存に使用するパッケージや保存方法に気をつけてください。
ダイエット中に避けるべき油とその理由
健康的にダイエットを続けるためには、できるだけ避けたほうが良い油も存在します。ここでは、ダイエットに悪影響を及ぼしやすい油を2つ紹介します。
ダイエットの天敵「飽和脂肪酸」を避けるべき理由
飽和脂肪酸は動物性脂肪であるラードやバター、肉、乳製品などに多く含まれています。
飽和脂肪酸を取りすぎると、血中の中性脂肪や悪玉コレステロールを増やす原因となります。また、体脂肪がたまりやすくなるため、ダイエット中は控えめにすることをおすすめします。
過剰摂取により肥満や高LDLコレステロール血症を引き起こし、循環器疾患のリスクを高める可能性があるとも指摘されています。
- 血液中の悪玉コレステロール(LDL)が増加するリスクがある
- 動脈硬化や脳卒中などの疾患を招く恐れがある
- 肥満や生活習慣病につながる可能性がある
- 死亡リスクを高める可能性がある
体に悪影響を及ぼす「トランス脂肪酸」の危険性
トランス脂肪酸は、マーガリンやショートニングなどに含まれており、これらを使ったパン、ケーキ、ドーナツなどの洋菓子や揚げ物にも含まれています。
トランス脂肪酸を取りすぎると、悪玉コレステロールが増え、反対に善玉コレステロールが減り、心臓病のリスクを高めると言われています。また、代謝が悪くなって脂肪燃焼が阻害され、ダイエットに悪影響を与える可能性が高いです。
- 血液中の悪玉コレステロール(LDL)が増加し、善玉コレステロール(HDL)が減少する
- 冠動脈性心疾患のリスクを高める可能性がある
- 肥満の原因になりうる
- 死亡リスクが高める可能性がある
不飽和脂肪酸はどれでもいいのか?
飽和脂肪酸はなるべく避けるようお伝えしましたが、では不飽和脂肪酸ならどれでも良いのかというと、実はそうではありません。
不飽和脂肪酸には【オメガ3】【オメガ6】【オメガ9】という3種類が存在しますが、【オメガ6】は取りすぎに注意が必要です。
以下のように、脂肪酸ごとの特徴を理解し、適切に使い分けることが、健康維持やダイエットにも役立ちます。
体に必要な油分!【オメガ3脂肪酸】
オメガ3脂肪酸は、血液をサラサラに保ち、過度な炎症を抑える作用を持つ、体に良い油です。体内で作られないため、食事から意識して摂取する必要があります。そのため、オメガ3を補うサプリメントも多く販売されています。
オメガ3を豊富に含む食品には以下のものがあります。
- サバやイワシといった青魚
- フラックスオイル(亜麻仁油やエゴマ油)
- しそ油
控えめにしたい油!【オメガ6脂肪酸】
オメガ6脂肪酸は細胞膜の構成成分として重要な役割を果たし、体内の機能を正常に保つために必要です。免疫機能にも大きく関わっています。体内で作られないため、オメガ3と共に必須脂肪酸と呼ばれます。
オメガ6とオメガ3はバランスよく摂取することが大事ですが、現代の食生活ではオメガ6の摂取量が多くなりがちで、バランスが崩れやすくなっています。
オメガ6を多く含む食品には以下のものがあります。
- サラダ油やごま油
- コーン油
- マヨネーズやドレッシング
- マーガリン
オメガ6を取りすぎると、血液が凝固しやすくなる、体内で炎症が強く出やすくなる(アレルギーにつながる)といった弊害が生じる可能性があり、摂取には注意が必要です。
加熱調理に強い油!【オメガ9脂肪酸】
オメガ9脂肪酸は、酸化しにくく安定しているため、加熱調理に向いています。ただし、体内でも合成できる脂肪酸であるため、摂取量には注意が必要です。
オメガ9を多く含む油としては、次のようなものがあります。
- オリーブオイル
- キャノーラ油
良質な油はダイエット効果を後押しします
MCTオイル、オリーブオイル、亜麻仁油といった良質な油を適切に摂取すれば、ダイエットのサポートになります。ただし、取りすぎは厳禁です。摂取する際は、以下のポイントを押さえましょう。
- 摂取量を守る:どの油も少量を心がけ、1日あたり大さじ1〜2杯程度に抑えるようにしましょう。
- 加熱を避ける:いずれの油も熱に弱いので、加熱せずに生で使うことで栄養素が効果的に摂取できます。
- バランスを保つ:MCTオイル、オリーブオイル、亜麻仁油をバランスよく取り入れたいという人には、これらをブレンドした「バランスオイル 」も市販されており、おすすめです。
ダイエットをされる際は、単に油を悪者扱いせず、ぜひ上手に付き合ってください。
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